中小法人と中小事業者と中小企業者と小規模企業者の違い

こんにちは、新潟市の税理士の渡邉です。

税理士として仕事をする都合上、言葉の定義・意味については慎重に把握するようにしているのですが、そんな中で似たような言葉に出くわすことも多々あります。

表題の4つの言葉はその最たる例ですが、一般の方からしたら違いが全く分からないかと思います。税理士である私もパッと定義を答えられる自信がありません。

今回は備忘録もかねて、この4つの言葉の定義についてまとめます。

目次

中小法人

「中小法人」とは、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものをいいます。

ただし、大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人等の法人)との間に100%子会社などの完全支配関係がある法人を除きます。

中小法人は、法人税法および租税特別措置法において定義されており、該当することで下記の税制優遇を適用することが可能です。

中小法人の税制優遇
  • 法人税の軽減税率の特例
  • 貸倒引当金の特例
  • 交際費等の損金不算入制度の特例
  • 欠損金の繰り戻し還付制度
  • 繰越欠損金の控除限度額の特例
  • 特定同族会社の留保金課税の不適用

中小事業者

「中小事業者」については、各自治体の補助金制度や中小企業庁の施策の中で使用される言葉で、法的な明確な定義が存在しません

制度ごとに「中小事業者の定義」が異なるため、対象となるかどうかをその制度の公募要領などで確認をする必要があります。

なお、下記の例のように企業だけでなく個人事業主が含まれるケースも多いです。

(例)大阪府の「中小事業者の対策計画書に基づく省エネ・再エネ設備の導入支援補助金」

中小事業者とは、次のいずれかに該当する方とします。

  • 中小企業基本法第2条に規定する中小企業者(「みなし大企業」は除く。)
  • 医療法人、社会福祉法人、学校法人で、常時使用する従業員の数が300人以下の方
  • 財団・社団法人であって、中小企業基本法第2条に規定する業種に記載の従業員規模以下の方
  • 特別の法律に規定する組合及び連合会であって、中小企業基本法第2条に規定する業種に記載の従業員規模以下の方
  • 個人事業主

中小企業者

「中小企業者」とは、中小企業基本法において定められている定義で、資本金の額又は出資の総額又は常時使用する従業員の数が、業種ごとに定められている数字を下回る場合に該当します。

業種分類中小企業の定義
製造業その他資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

また、租税特別措置法においても「中小企業者」という言葉が使われることがあります。

この場合の定義は、「資本金の金額または出資金の額が1億円以下である法人又は、資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員が1,000人以下の法人」となります。

※業種による違いは無し、個人は含まれない

「中小企業者」という言葉は、中小企業基本法と租税特別措置法においてそれぞれ別の定義をもつため注意が必要です。

小規模企業者

「小規模企業者」とは、中小企業基本法において定められている定義で、中小企業者の中でも特に小規模な事業者を指します。

業種分類小規模企業者の定義
製造業その他常時使用する従業員の数が20人以下
商業(卸売業・小売業)・サービス業常時使用する従業員の数が5人以下

また、非常によく似た言葉に「小規模事業者」があります。

こちらは小規模事業者の支援に関する法律、中小企業信用保険法、小規模企業共済法の3法において以下のように定義されています。

業種分類小規模事業者の定義
製造業その他常時使用する従業員の数が20人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業常時使用する従業員の数が20人以下
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)常時使用する従業員の数が5人以下

宿泊業・娯楽業以外は違いがありません。

小規模事業者に該当する場合、小規模企業共済制度を活用することができたり、小規模事業者持続化補助金を受けることができたりします。

まとめ

用語の定義まとめ

用語定義・特長法的根拠
中小法人資本金・出資金の額が1億円以下である法人法人税法、租税特別措置法
中小事業者法的な明確な定義なし。個人事業主も含むケースも自治体の補助金制度など
中小企業者業種ごとに定義される資本金・従業員数などの規模が一定以下の法人・事業主
税法においては別の定義となる
中小企業基本法、租税特別措置法
小規模企業者
(小規模事業者)
中小企業者のうち、従業員数が少ない事業者中小企業基本法、小規模事業者支援法

用語によって明確な定義がなかったり、同じ用語でも適用される法律によって定義が異なったりするため、これらの言葉を取り扱う際には注意が必要です。

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