こんにちは、新潟市の税理士の渡邉です。
物価や人件費が高騰する中で、商品やサービスの値上げを検討されている事業者の方も多いと思います。
ただ、いざ値上げをしようと思っても、いくら上げれば良いのか判断に迷うことも多いです。
今回は値上げを考えるときに具体的に何を基準にして考えれば良いのかを解説します。
基準となる考え方は3つ
値上げの基準となる考え方は、
- 市場・競合(相場)との比較
- コスト構造からの逆算
- 値上げをすることで減るお客さんの割合(価格弾力性)
の3つがあり、この3つの要素を総合的に考慮して決定することで納得感のある価格設定が可能となります。
市場・競合(相場)との比較
値上げを検討する際に、同業他社の料金について今一度調査をすることをおすすめします。
調査先として、自社のお客様が「比較対象にしそうな商品やサービス」を扱っている他社を3~5社選定すると良いです。
調査のポイントが2つあります。
1つが、一番安い価格で提供しているところを調査するのではなく、よく選ばれているところを調査するということです。
最安値を調査して、それに負けない価格で勝負しようとしてしまうと値上げをすること自体が困難になってしまいます。
もう一つが、本当に「同業なのか」を見極めて調査先を選定することです。
例えば個人でハンバーガーショップを経営している場合に、マクドナルドのような大手ハンバーガーチェーンを調査先に選んでも正しい比較はできません。
お客様が個人のハンバーガーショップとマクドナルドを比較することは少ないですし、そもそもの利益の上げ方・価格の決め方が異なるため、参考にならないのです。
同業他社を調査することで、相場感を見直し、どれくらい値上げをするのかの参考にします。
コスト構造からの逆算
コスト構造からの逆算とは、値上げを検討している商品1つに対して、原材料や輸送費といった費用がどのくらいかかっているかを計算することを指します。
商品(またはサービス)1つを構成するコストは、変動費(売上に連動して増減する費用)と固定費(売上に関わらず発生する費用)に分解することができます。
具体例:焼き鳥屋の場合
テナントで焼き鳥屋を経営する場合を例に考えてみます。かかる費用は便宜的に以下とします。
| 品目 | 勘定科目 | 変動費or固定費 |
|---|---|---|
| 鶏肉(材料費) | 仕入 | 変動費 |
| 串 | 消耗品費 | 変動費 |
| 店舗家賃 | 地代家賃 | 固定費 |
| 調理スタッフの給与 | 給料 | 固定費 |
焼き鳥1本分の材料費が40円、串が1本2円、店舗家賃が月額12万円、スタッフの給与が月額30万円として
1日300本売り、月20日稼働するとします。(ひと月に6,000本売る)
この条件下で焼き鳥1本分のコストを計算します。
店舗家賃とスタッフの給与が焼き鳥1本あたりにいくらかかっているかを考えます。(これを固定費の配賦と言います)
- 1本あたりの店舗家賃=月額12万円/(300本×20日)=20円
- 1本あたりのスタッフの給与=月額30万円/(300本×20日)=50円
焼き鳥1本=材料費40円+串2円+家賃分20円+給料分50円=112円
焼き鳥1本を売り上げるために必要なコストが112円と計算することができました。
この1本112円を指標として、売値をいくらにするのかを考えていくことになります。
※当たり前ですが、売値を112円より下げてしまうと赤字ということになります。
値上げをすることで減るお客さんの割合(価格弾力性)
値段を上げたときに、どのくらいお客さんの数が減るのかを示した割合を価格弾力性といいます。
一般的に、代わりがあまりないものや専門的なサービスなどは価格弾力性が低い、つまり値段が変わってもお客さんの数が変わらないと言われており、代表的なものに弁護士などの専門サービスや公共料金などがあります。
反対に、カフェや日用品などは代替が多いため価格弾力性が高く、価格が変わるとお客さんの数が大きく変わります。
具体例:フレンチレストランで値上げをした場合
コース料金を5,000円に設定していたフレンチレストランが、下記の条件で値上げをした場合に、月の粗利益がどう変化するかを見てみます。
- コース料金は現在5,000円
- 月の顧客数:100人
- 変動費(原材料+光熱費など):3,000円
※固定費は顧客数が変わっても上下しないため考慮しない
| 価格(円) | 値上げ幅 | 想定顧客減少率 | 顧客数(人) | 売上高(円) | 粗利益(円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 5,000 | ― | ― | 100 | 500,000 | 200,000 |
| 5,500 | +10% | 10% | 90 | 495,000 | 225,000 |
| 6,000 | +20% | 20% | 80 | 480,000 | 240,000 |
| 6,500 | +30% | 35% | 65 | 422,500 | 227,500 |
| 7,000 | +40% | 50% | 50 | 350,000 | 200,000 |
ここで注目してほしいのは、コース料金を6,000円に値上げした場合に、5,000円のときと比較して売上高は減っているが粗利益が増えているという点です。
値上げをすることで顧客数は減りますが、顧客1人あたりの利益が増えます。
さらに、顧客数が減ったことにより変動費の総額が減ります。
結果として、値上げ前と比べて粗利益が残ります。
価格弾力性をもとに値上げを考えるときの最大のポイントは、売上高を最大化するのではなく、利益(粗利益)を最大化させる価格を考えるということです。
まとめ
実際に値上げをする際には、①~③の全てについて検討し総合的に判断することになります。
検討の順番をつけるとしたら、②商品のコスト構造を把握する⇒①市場の調査⇒③価格弾力性の検討がおすすめです。
しっかり検討した値上げをおこなうことで事業の利益を守っていきましょう。
